夕刊が売れる街

新聞が売れなくなったといわれて久しい。
かくいう私も、一人暮らしをはじめた20数年前から現在に至るまで、新聞というものを購読した記憶がない。新聞とは消えゆくメディアなのだろうか?
たしかに、リアルタイムで情報が入手できるネット時代において、新聞よりも新鮮な情報源は無数にあるし、かつて新聞が担っていた役割は、他のメディアに代替されてしまったと言っても過言ではない。
しかし、そんな時代になお宇部市民に必要とされ、愛されている新聞があるのをご存知だろうか。
その新聞の名は「宇部日報」。
平日15時頃に宇部市内の各家庭に配布される、全国でも10紙ほどしか残っていない”地方紙の夕刊”という希少種だ。
2016年現在の発行部数は4〜50,000部、宇部市の世帯数がおよそ80,000世帯なので、単純計算で2件に1件以上の世帯が宇部日報を読んでいることになる。
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ある日、仕事で使うゴム印を作ってもらおうと市内の判子屋を訪ねた。
用紙に必要事項を記入して筆をおいたとき、ふとカウンターにあるチラシが目に留まった。
それは東京・六本木にある国立新美術館で開催される書展の案内で、二畳ぐらいしかない小さな店舗と国立新美術館のコントラストが気になり、なぜそのチラシが置いてあるのかと尋ねた。
すると、判子屋の店主は名の知れた書家で、宇部市在ながら毎年六本木で書展を開催しているのだという。
現代書壇を代表する一流書家が、まさか市内の判子屋を経営しているとは。
「驚きました。しかし、そのような優れた方がいらっしゃることを、市内の人は全然知らないでしょう?」と私が言うと、店主の母親が「このまえ宇部日報に取材してもらってから、近所の人に『すごいねえ』と言われるようになったんです。あなたも人に知らせたいことがあったら、宇部日報の取材を受けるといいですよ。」と、はにかみながら教えてくれた。

このように、宇部市にまつわる情報のほとんどは、宇部日報というメディアを通して市民に伝わる。
ご近所さんの情報から、町内スポーツ大会の結果、さらには知人の訃報まで、重要だが他のメディアでは教えてくれない情報を、宇部日報は教えてくれる。だから、市民の半数以上が宇部日報を必要とし、愛している。宇部とはそういう街だ。
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*撮影場所は、ファブラボ山口のある山口市の米屋町商店街

 

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